2026年6月25日

【世界卓球】銀メダルを、糧に ―― 戸上隼輔が描くロサンゼルスへの地図

戸上 隼輔

銀メダル。手放しでは喜べない結果を、戸上隼輔(井村屋グループ)は早くも次への糧へと変えはじめていた。視線の先にあるのは、2年後の世界卓球、そしてロサンゼルス五輪。

シリーズ最終回は、世界の頂点を見据える戸上が描く、これからの地図をたどる。

今までで、いちばんプレッシャーを感じた大会

世界卓球ロンドン2026を、戸上は「学びの大会」と総括する。

戸上 隼輔戸上 隼輔
「今回は本当に、学ぶことが多かったなと思います。今までで一番プレッシャーを感じながら試合をした大会だったので、本当にいろんな面で成長できたなと思っています。卓球の面でも、いろんな技術、戦術、トップ選手から学ぶことや、考えさせられることが多々あったので」

その学びは、未来への投資だと戸上は言う。

「次の2年後、世界卓球でも、やっぱり金メダルを期待できるメンバーだと思っていますし、自分もその一員として期待してもらえるように頑張りたい。この大会での糧は、この2年間大切に、自分の成長のために努力していきたいなと思っています」

何種目でも強い選手に――次の戦いはもう始まっている

帰国の余韻に浸る間もなく、戸上の戦いはすでに動き出している。すぐ先に控えるのは、ヨーロッパでの連戦だ。

WTTコンテンダー・ザグレブは、今の段階だとシングルスは出なくて、ミックスとダブルスだけエントリーになっている。オリンピックのことを考えた時に、ダブルス、ミックスも入ってきたので。シングルスはもちろん世界ランキングを上げると同時に、ダブルスでも世界ランキングを上げていかないといけないというのが、最低条件なので」

目標は、はっきりしている。

「その第一歩として、次の6月のザグレブ、そしてリュブリャナが2戦続くんですけど、そこで優勝できるように。そして7月のUSスマッシでも優勝できるように、精進したいなと。何種目でも強い選手になりたいなと思っています」

女子頼りのチームでは、いけない

戸上が見据えるのは、自分一人の勝敗だけではない。日本の男子卓球そのものを、もう一段高い場所へ引き上げること。それが、銀メダルを手にした今、彼が背負う課題だった。

「今後団体となった時に、女子頼りになるのは、僕たちとしても良くないと思っているので。男子も常に中国と戦える、そして中国以外の国にも勝てるようなチームワークを、このロスまでの期間で構築しなければいけないなと思っています」

その視野には、団体戦の新しい形まで入っている。

戸上 隼輔戸上 隼輔
「個人戦も、シングルスとしての実績が必要だと思いますし、アジア競技大会だったり、2年後の世界選手権の団体戦で、決勝進出できるような底力のある日本チームを作りたい。今後の団体ではミックスダブルスも中に入ってくるので、そこで自分がチームに貢献できるような、信頼というかアピールができるように頑張りたいなと思います」

トップテンへ、そしてシングルスで五輪の椅子を

個人としての最大の目標は、五輪のシングルス。だが、その椅子をめぐる争いは、国内ですでに激しい。

「シングルスでオリンピックに出たいというのがあるので。上に2人いる中で、その争いに自分が食い込んでいかないと、チームの底上げにもならないと思います」

だからこそ、戸上は明確な数字を口にする。

戸上 隼輔戸上 隼輔
「1年前にはトップテンに入って、自分もシングルスを狙えるようなところまで、実力を上げていきたいなと思っています」

銀メダリストの視線は、すでにその先の景色を捉えていた。

応援してくれた人へ、伝えたかったこと

長い大会を戦い抜けたのは、自分一人の力ではない。戸上は、画面の向こうで声援を送り続けたファンへ、まっすぐに感謝を述べた。

戸上 隼輔戸上 隼輔
「まず、長い世界卓球の期間の応援、ありがとうございました。皆さんの支えがあったから、長期間、自分も戦い抜けたと思いますし、粘り強く、辛抱強く戦えたかなと思います。これからも、小さな大会、大きな大会に関わらず、変わらない応援をよろしくお願いします」

これから卓球を始める君へ「まずは、楽しんで」

最後に、これから卓球を始める子どもたちや、戸上に憧れる若い選手へ――。トップで戦い続ける男から届いたのは、強さではなく、原点の言葉だった。

戸上 隼輔戸上 隼輔
「僕が小さい頃は、卓球を無我夢中に、楽しく、毎日やっていた。強くなることも大事なんですけど、まずは楽しさを忘れないことが一番大切だと思っているので、存分に楽しんでください」

そして、自身もまた、頂点への歩みを止めない。

「世界卓球で卓球の魅力を伝えられたかわからないんですけど、これからも引き続き、世界の頂点を目指して頑張るので、結果を追っていただけると嬉しいです。引き続き、頑張ります」

銀メダルは、ゴールではない。戸上隼輔にとっては、ロサンゼルスへ続く地図の、一つの通過点だった。