2026年6月18日

お金の勉強はいつ始める?登坂絵莉が語る、人生の選択肢を増やす資産形成

登坂 絵莉

登坂絵莉が本格的に資産形成について学び始めたのは、東京オリンピック代表落選とコロナ禍が重なった時期だった。

現役時代のお金事情、女性特有のお金の話しづらさ、そして引退後への不安。

今だから語れるリアルなお金との向き合い方を聞いた。 

“なんとかなる”と思っていた現役時代のお金事情

現役時代、登坂の収入の中心は、公益財団法人日本オリンピック委員会(以下JOC)からの助成金と協力金、そして所属企業からの給与だった。


レスリングは大会賞金が出る競技ではないため、学生時代はJOCからの助成金に加え、JOCが認定するTEAM JAPANシンボルアスリートとして活動することで、協力金を受けながら競技生活を送っていた。

社会人になってからは、それらに所属企業からの給与も加わり、競技生活の基盤を築いていたが、当時は資産形成について深く考えたことはないという。


「お金の使い道はほとんど考えていなかったですね。特に物欲があったわけでもないですし、人に喜んでもらうことが好きなので、レスリング部のみんなにご飯をおごったり、後輩や友達に何かプレゼントしたり、自分よりも人に使うお金の方が多かったと思います」


アスリートは決して安定した職業ではないが、将来への危機感は強くなかったと話す。


「当時は、“なんとかなるでしょ”と思っていました。本当に生活できなくなったら、死にものぐるいで働けばいいと単純に考えていた部分もあると思います。正直、引退後や将来のお金のことをちゃんと考えたことはほとんどなかったですね」


一方で、母親が銀行に勤めていた影響もあり、お金に対する守りの感覚はある程度は身についていたという。


「口座を複数に分けるとか、使っていないお金があるなら定期預金にするとか、10年後に解約するなら銀行に入れるよりもこっちの保険の方がいいとか、そういう話は母から教えてもらっていました。万が一、銀行が破綻した時、いくらまでなら保証してもらえるとか、リスク管理面のことも教えてもらえたのは良かったと思います」


とはいえ、当時は資産形成への関心が高かったわけではなく、母親から勧められたものを取り入れていた程度だった。 

東京オリンピック落選とコロナ禍で始めた、登坂絵莉のお金の勉強

登坂が本格的に投資に興味を持ち始めたのは、コロナ禍のタイミングだった。

東京オリンピック代表を逃し、自身の今後について考える時間が増える中、友人から送られてきた投資の動画がきっかけになったという。


「時間があったらこの動画を見てみなよと勧められて、ためしに見てみたんです。最初はそんなに魅力を感じなかったのですが、いくつか見ているうちにだんだん面白くなってきて、勉強してみようかなという気持ちになりました」


そこから様々な動画や書籍を通して少しずつ知識を深めていった。


「最初に個別株にチャレンジするのはハードルが高いなと思いましたが、積み立ての投資信託であればリスクは低そうだし、長く持つなら銀行に入れておくよりもいいのかなと。長期目線で10年、20年後の将来のためにやってみようと思って、本格的に始めることにしました」


長期投資という考え方に納得感があったという背景には、アスリートならではの将来への不安を感じ始めたことも影響しているという。


「コロナ禍は東京オリンピック代表を逃した時でもあったので、今後について色々考える時期だったんですよね。引退が現実的になった時、その後の収入に不安を感じました。さらに当時は、老後2000万円問題も話題になっていて、やっぱりお金は人生を考える上で避けられないなと思いました。この時のアスリートとしての不安が、投資に向き合うきっかけになった部分は大きいと思います」


一方で、女性アスリートの仲間内には、お金の話しを避ける空気感もあったという。


「女性同士って、お金の話をほとんどしないんですよね。聞いていいのかな?という空気もあるし、お金の話をすると“がめつい”と思われそうな感じもあって…レスリングはアマチュアスポーツなので夢をひたむきに追うという雰囲気もあって、お金の話はタブーという感じでした。でも、私はレスリングで稼いで、家族や周りの人たちに恩返しをしたいとも思っていたので、色々な企業の条件面などは監督に聞ける範囲で聞いていました」


そうした経験を経たからこそ、アスリートがお金について学ぶことの重要性を感じているという。 


「レスリングは競技としてはアマチュアでも、結果を残すことが仕事という意味ではプロと変わらないので、もっとお金について考えたり、学んだ方がいいと思うんです。現役の期間は限られているので、できるだけ多く手元に残せた方がいいですよね。その点で言えば、今の選手たちは意識が高くなってきていて、自分で所属先を探して移籍したり、新たな道を切り開いていく選手もいるので、すごく良いことだと思っています」

個別株で損切り…“焦らないこと”の大切さを実感


投資を始めた当初、登坂は高配当ETFとインデックス投資を中心に購入していた。


「配当生活にちょっと憧れもあって、高配当ETFは買いました。VYM、HDV、SPYDですね。すごく悩んで、どれも良さそうで選べなかったこともあり、3つに入れる形で買いました。インデックスも、S&P500とオール・カントリーの両方に投資しています」


ただ、始めて1年ほどで高配当ETFの購入は辞め、インデックス投資へ比重を移したという。


「実際に配当が入ってきた時に、“これで生活するにはどれだけのお金が必要なんだろう”ということに気付いたんです(笑)やっぱり自分には10年後、20年後を見据えた長期の成長投資の方が向いていると思って、全部インデックスに切り替えました。長期投資に関しては、日々の値動きに一喜一憂しても意味がないので、必要以上に見ないことを大事にしています」


そして、現在は本格的に個別株にも挑戦しているが、そこで失敗も経験したと話す。


「今年の1月に個別株をやり始めて、最初すごい調子良かったんですよ。“私、センスあるな”って思うくらい(笑)あのまま絶対いけると思ったんですけどね…」


しかしその直後、中東情勢の悪化などを受けて株価が急落。不安から損切りをしてしまった。


「毎日どんどん下がっていって、これ以上、下がったら本当にどうしようってすごく怖くなって、焦って損切りしちゃったんです。でも、1か月後くらいにまた戻ってきたんですよ!本当に、“あのまま持っておけばよかった…失敗した…”と思いましたね」


この経験から、焦らないことの大切さを痛感したという。


「やっぱり個別株は難しいと身に沁みましたし、完全に経験不足だったと思います。戻ると言っている専門家の人もいましたが、自分には経験がなさすぎて…もっと経験があれば、焦って損切りせずに持ち続ける選択肢も選べたかもしれないですね。でも今は自分が調子に乗っていたことも、センスがないこともわかったので(笑)一生懸命勉強するしかないと思っています」


そして現在は、毎朝日経新聞を読み、市場をチェックすることが習慣になっている。


「毎日1~2時間は勉強しています。動画を見たり、本を読んだり、勉強している時間が今一番面白いかもしれないですね。資産形成の勉強することで、世界情勢や世の中のニュースも理解できるようになるので、コメンテーターなど、日頃のお仕事にも役立っている感覚があります」

人生の選択肢を増やすために、今からできるお金の勉強 

登坂は息子の養育資金についても投資を活用しているという。


「息子が生まれてから、ジュニアNISA(※2023年に制度は終了)と、息子名義の証券口座を作りました。息子のお祝いなどでいただいたお金は投資にまわして、長期目線で将来的に増やせるように考えています。子育てをしていく中で、選択の幅が狭まらないように、しっかり準備はしていきたいと思っています」


ゆくゆくは、子どもにも早い段階からお金との向き合い方を伝えていきたいという。


「友達から、“子どもが新しいおもちゃを欲しがったら使わないおもちゃを選ばせて、それをフリマアプリで売ってお金に変えてから、新しいおもちゃを買うようにしている”と聞いたんです。それってすごくいい経験だと思うんですよね。お金の価値とか、社会の仕組みもわかるようになるし、私も取り入れたいと思いました」


そして、若い世代のアスリートにもお金との向き合い方を大切にしてほしいと話す。 


「アスリートは、比較的若い頃から同年代よりもまとまったお金が手元にある人も多いと思うので、そのお金をどう使うかを考えることはすごく大事だと思います。今振り返ってみると、無駄遣いしたなと思うこともありますね。ずっと選手を続けられるわけではないので、人生の選択肢を増やすためにも、早いうちから学んでおくことは大切かなと思います」


また、引退後のキャリアについても、自身の経験を踏まえてこう語る。 


「私自身、引退後の人生を考えていた時は不安だらけでした。その時に、“早めに引退することは、次のステップへのスタートを早く切れるということ。それはとても良いことだと思う”と言ってくれた人がいたんです。その言葉がすごく印象に残っていて、もし同じように悩んでいる人がいるなら、なるべく足踏み状態の期間を作らずに次へのスタートを踏み出してもらえたらいいなと思います」


最後に、これから資産形成を始めようとしている人たちへ、こんなメッセージを送った。 


「資産形成について興味はあっても、始め方がわからない人も多いと思います。私もまだまだ勉強中ですが、一歩踏み込んでやってみたら何か見えてくるものがあるんじゃないかなと思うので、みんなで一緒に学んでいけたらと思っています」


現役、引退、結婚、出産。さまざまなライフステージを経験してきた登坂絵莉。

だからこそ、学び続ける姿勢と言葉の一つひとつからは、人生の先を真剣に見据えたリアリティがあるのだろう。