
アスリートから理事長へ—女性リーダーとしての覚悟
競技人生を終えたあとも、登坂絵莉の挑戦は終わらなかった。
現在はスマイルコンパスの理事長として、社会と向き合い、責任を引き受ける立場に立っている。
単なる社会貢献活動ではなく、未来の子どもたちのために。
その背景には、アスリートの枠を越えた新しいキャリアの物語がある。
一般社団法人という選択、単なるプロジェクトでは終わらせない
スマイルコンパスは、一つのプロジェクトとして立ち上げることもできた。
法人化せず、任意団体として活動するという選択肢もあっただろう。
それでも登坂は、一般社団法人として立ち上げる道を選んだ。
その背景には、いくつかの理由があると話す。
「スマイルコンパスは、すべての子どもたちにスポーツ本来の楽しさを届けたいという想いから始まりました。株式会社だと利益の追求という印象が強く、私たちの活動の本質とずれてしまうので、社会貢献や公共性という面を大切にしたいという想いから、社団法人にすることにしました」
そして、もう一つ大きかったのは、法的な責任を引き受ける覚悟だったという。
「一つのプロジェクトで終わらせるのではなく、きちんと登記をして社団法人を立ち上げる。法的な責任を持つことで、この活動にしっかり向き合うというより強い覚悟を持てると思ったんです。その中で、試行錯誤しながら、5年、10年、15年と続いていく活動にしたいですし、そういう女性リーダーになっていけたらいいなと思って、このような形を選びました」
スマイルコンパスは、活動の内容だけでなく、組織の在り方そのものも、未来につながる形で挑戦を続けている。
「企業のドアをノックする」初めての経験から得た学び

スマイルコンパスの理事長になってから、登坂は企業へのアプローチ活動も積極的に行っている。
これは、アスリートとして活動しているだけでは、なかなか得られない経験だと話す。
「企業に自ら出向き、自分たちの活動を紹介させていただくというのは、人生で初めての経験です。これまでのアスリート人生を話すのとは全然違いますし、スマイルコンパスの活動をどれだけ誠意と熱意を持って伝えられるか。団体のトップとして活動することで、企業への働きかけや社会との関わり方も含めて、自分のキャリアにも繋がりますし、とても勉強になっています」
スポーツの世界では、練習や試合で成果を示していた登坂が、今は言葉と資料で活動の価値を伝える側に立っている。
そして、現在スマイルコンパスの活動は、OBI HOLDINGS、ソニー生命、三井不動産、豊田通商、ニチバンの5つの企業の温かい支援によって支えられている。
「どの企業も、なぜ私たちがスマイルコンパスを立ち上げたのか、子どもたちにどんな時間を届けたいと考えているか、実際にどういう内容の活動をしているのかなど、一つ一つの話に耳を傾け、みなさんが共感してくれました。訪問先の紹介や、現場の視察、オリジナルグッズの製作など、様々な形でも活動を支えてくれていて、本当に感謝しています」
想いを共にしてくれる企業パートナーと出会い、スマイルコンパスの活動は特別支援学校から離島まで、確実に広がりを見せている。
スポーツには、「する・見る・支える」というさまざまな関わり方がある。
競技引退後のアスリートが、社会の中で新たな役割を担うことも、その一つだろう。
「少しでもたくさんの人に、社会的な活動に興味を持ってもらえるきっかけになったら嬉しいですし、現役世代のアスリートにとって、引退後の目標になれるような存在になれたらと思っています」
登坂の想いは、スポーツのその先のキャリアを描くヒントになり得るかもしれない。
5年後、10年後、15年後。
スマイルコンパスが今の形のままかどうかはわからない。
世の中の状況や子どもたちのニーズに合わせて、活動のかたちが変化していくこともあるだろう。
それでも、“未来の子どもたちへスポーツの本来あるべき姿を魅せる”というスマイルコンパスの方向性は変わらない。
登坂絵莉はそれを支え続けるリーダーとして、今日も力強く歩き続けている。
