2025年12月27日

「水泳が楽しくない」からの再出発─三井愛梨、4ヶ月のオーストラリア留学で掴んだ心の変化

三井 愛梨

 「水泳が楽しくない」


これはパリオリンピック後に浮かび上がった三井愛梨(旭タンカー所属)の課題だ。

法政大学国際文化学部の三井は、パリオリンピックが終わったら学部の取り組みとして、オーストラリアへ4ヶ月の短期留学へ行くことが決まっていた。

パリオリンピックでの悔しい気持ちを持ったまま向かったオーストラリア。


心は沈んでいたが、水泳から少し離れたいと考えていた三井にとってはいいタイミングでもあった。



水泳から距離を置いた1ヶ月─心の充実と揺れる決意「水泳から離れる」選択



「せっかくの短期留学なのだから、充実した日々を過ごそう」と気持ちを切り替え、現地の授業を受けながら穏やかな毎日を過ごすようにしていたという。


最初の1ヶ月くらいはジムで体を動かす程度で、泳ぐことはまったくしなかった。


気持ちがネガティブになっていたこともあり、水泳を続けていくのか、それとも辞めるのかという自問自答を続けていた。



インカレの仲間の姿がくれた再出発のきっかけ



そんな中、インカレ(日本学生選手権水泳競技大会)で奮闘する法政大学のチームメイトや同期の姿を見て、心が震えた。


「やっぱり水泳っていいな、楽しいな」

純粋にそう思った。

それは、水泳を続けようと思うには十分な刺激だった。


そこからの三井の行動は早かったという。

水泳を続けると決めたからには、残り3ヶ月の留学期間中にも泳げる場所を探す必要があると思ったからだ。


まずは知り合いに連絡を取り、現地のスイミングクラブに当てがないかを聞いてみた。

そこからクラブを紹介してもらえることになり、自ら現地クラブのコーチにコンタクトを取った。

無事受け入れが決まってからは、週2~3回のペースで三井は水泳を再開した。



現地クラブで再スタート─「水泳と日常の両立」



そして再び泳ぎ始めたことにより、いかにこれまでの人生が水泳中心であったかに気付いたという。


日本では生活の大半は水泳で、水泳以外のことに使う時間はほとんどなかった。

そういう毎日を送る中で、いつからか「水泳が楽しくない」状態になっていたのだと。


こんな状態ではオリンピックで結果を出せるわけがなかったと納得した自分もいたという。

そこで現地のスイミングクラブでは「水泳を楽しむこと」に焦点を当てることにした。


しかし、どうやったら楽しめるのか、いざやろうとしてもなかなか具体策は見つからず、現地のコーチにアドバイスを求めた。


「水泳とそれ以外のバランスが大事だよ」


返ってきた答えはシンプルなものだったが、水泳一辺倒の生活を送っていた三井の心には深く響いた。


「ああそうかと思いました。私は今まで水泳しかしていなくて、それが当たり前だったし悪いことだったとも思わないんですけど…それ以外のことがなかったんです。本当に水泳しかしていなかったので、辛い面しか見えなくなっていた自分に気が付きました」



チーム練習で感じた水泳の楽しさと競技の魅力


さらに、現地のチームメイトが楽しそうに練習をしていることにも驚いたという。

日本にいた時のチームでは感じたことがない雰囲気だった。


みんなが本当に楽しそうに練習をしている、その雰囲気がすごく心地よかった。

三井は現地のスイミングクラブについてこう語った。


「私はパリオリンピック日本代表に内定してから、オリンピック本番当日まではずっとマンツーマンで練習していたのですが、正直結構きつかったんです。オーストラリアのスイミングクラブではみんなが楽しそうに練習をしていて、その中で私も一緒に練習をさせてもらって、やっぱりみんなで一緒に頑張るのって本当に楽しいなと思いました。水泳は個人競技ですが、仲間と一緒に切磋琢磨して高め合っていくのが楽しさであり、水泳の魅力だということを改めて感じました」


沈んでいた心が晴れていくのがわかった。



留学で掴んだ気づきが未来への扉を開く



そこから意識が変わり始め、周囲の人たちと積極的にコミュニケーションを取れるようになり、自身のことも発信していこうと思えるようになった。


水泳だけでなく、授業をしっかり受け、プライベートも大切にし、それぞれを楽しむことで「バランスが大事」ということがわかるようになったという。


「オーストラリアにいた時は過去一、太っていました」と三井は笑った。

それほど充実した日々を過ごせたということだろう。


「水泳が楽しくない」


沈んだ心を抱えながら向かったオーストラリアの短期留学。

その4ヶ月の間で再び水泳への意欲を取り戻し、水泳とそれ以外のバランスの大事さを知った。


未来へと視線を向けられるようになったタイミングで、インスタグラムのDMに届いた1通のメッセージ。

三井愛梨の新たな挑戦への道は、こうして開けていった。