
長野から世界へ「THE FIRST STEP -JUDO Fes 2025 with Christa-」出口クリスタが見据えた子どもたちの挑戦の原点
2025年11月9日、長野県松本市・エア・ウォーターアリーナ松本で、柔道世界女王・出口クリスタの冠大会「THE FIRST STEP -JUDO Fes 2025 with Christa-」が初開催された。
地域の力と多くの協賛企業のサポートに加え、クラウドファンディングを通じた支援者たちの力によって実現した本大会には、330名を超える子どもたちや地域の方々が集い、柔道の楽しさ、挑戦の価値、仲間と学ぶ喜びを共有し、会場中には興奮と熱気、温かな笑顔が広がる特別な時間となった。
|出口クリスタが語る、原点への感謝と子どもたちへのバトン
大会の構想は、ある一言から始まった。
「体育館の畳が新しくなるから、地元の子どもたちのための大会をやらないか」
出身道場からの相談が、クリスタの心に火をつけた。
世界で活躍する彼女が、常に胸に抱いてきたのは長野への恩返しだ。
「私の柔道人生は、この長野の地から始まりました。地元の道場で汗を流し、強い選手や憧れの先輩と出会い、もっと強くなりたいという気持ちが育っていきました。今度は私が、子どもたちにその機会をつくりたい。」
そう話すクリスタの想いは、単なるイベント開催ではなく、この大会で子どもたちがたくさんの挑戦をし、将来的に世界へ羽ばたいてほしいというビジョンとなり、子どもたちの「はじめの一歩」を支えるプロジェクトとして形になっていった。
長野から世界へ。
それはクリスタ自身が歩んできた道でもある。
|地域の力とたくさんの支援が支えた子どもたちの舞台

「本当に多くの方によって支えられ、実現した大会でした」とクリスタは振り返る。
とりわけ、クリスタの所属先である日本生命保険相互会社をはじめ、株式会社サンコー、株式会社ヒノデメディカルなど、多くのパートナー企業の存在が大きな支えとなった。
当日もこれらのパートナー企業の役員の方々が会場に足を運び、子どもたちの試合やプログラムを温かく見守っていた。
また、開催地である松本市に加え、クリスタの出身地である塩尻市とも連携しながら大会を実現できたことも大きいという。
自治体の理解と協力があったからこそ、子どもたちが安心して参加できる環境や、安全面・運営面を整えた大会づくりが可能になった。
今後もこうした自治体との連携を軸に、スポーツを通じた地域活性化を目指していきたいと考えている。
そして、クラウドファンディングを通じた支援者たちの力も大きな励みになった。
支援金は、会場設営費、審判員やサポートスタッフなどの人件費、救護体制の整備などの安全対策費、運営備品費用など大会運営のために幅広く活用された。
子どもたちの「はじめの一歩」をどう形にするか、競技プログラムの内容はもちろん、開閉会式や表彰式の演出・選曲、クリスタ自身の軌跡をたどる動画制作など、長い時間をかけて段取りを重ねてきた。
大会前日に行われた畳の搬入と会場設営は、約50名の小学生〜高校生の協力のおかげもあり、およそ3時間で見事に柔道会場が整ったという。
子どもたち自身が会場づくりに関わった点も、この大会らしい温かさを象徴している。
クリスタは「たくさんのご支援とご協力に心から感謝しています。また、地域の皆さんと直接つながる機会をいただけたこともとても嬉しかったです。これからも柔道やスポーツの魅力を伝えながら、子どもたちの成長に寄り添える活動を続けていきたい。」と感謝の気持ちを述べた。
|子どもたちが自ら考える7人制団体戦~指導者が技術指導をしない特別ルールの中で見えた成長~

大会の目玉となったのは、7人制団体戦。
この試合形式には、「子どもたちの自主性を育てたい」というクリスタの強いこだわりがあった。
コーチが技術指導をせず、子ども同士が声を掛け合い、助け合いながら戦う。
そんな特別ルールの中で、子どもたちは自ら考え、仲間を励まし、支え合う姿を見せていた。
試合を重ねるごとにチーム内の会話が増え、応援の輪が広がっていく。
試合前に緊張していた子が仲間の励ましで笑顔を取り戻し、敗れて涙を流した子を別の子がそっと慰める。
その一つ一つの光景が、この大会が目指してきた成長の時間そのものだった。
クリスタはこの団体戦をこう振り返る。
「今日は、私が子どもたちに元気になってほしい、柔道を楽しんでほしいと思って企画したものでしたが、気づいたら私がめちゃくちゃ笑顔になっていた。そんな一日でした。」
そして、子どもたちの涙にも意味があると語る。
「負けて泣くことも、痛くて泣くこともあるけれど、それが次につながるのであれば、今日は良かったんじゃないかなと思います。」
技術的な助言をしないという特別ルールの中で戸惑う場面も見られたが、クリスタはそれも成長の一部として大切に捉えている。
「本当は言いたいところをグッと我慢してくれた監督たちや保護者の皆さんには、とても感謝しています。家に帰って怒られているかもしれないですが(笑)それでも、試合の時に怒ったり、技術的な指導をしなかったことで、何か発見があったのであれば、この企画は成功だったんじゃないかなと思います。良くも悪くも、何か気づきがあればいいなと思います。」
そして最後に、試合を通して子どもたちの挑戦する姿に勇気をもらったと語った。
「子どもたちが仲間と競い、学び、新しい挑戦をする姿を間近で見ることができ、とても幸せな時間でした。自分の子ども時代を重ね、純粋な気持ちを思い出し、たくさんの勇気をもらいました。」
この7人制団体戦は、子どもたちにとって自ら考える力を育む新しい体験であり、同時に大人たちにとっても見守ることの大切さを再認識する機会となった。
|トークセッションと体験プログラム~クリスタと子どもたちが一緒に動き、笑った時間~

午後には、スポーツドクター辻󠄀秀一氏とクリスタによるトークセッションが行われた。
試合に向けて心を整える方法や子どもへの応援の仕方など、保護者や指導者にも響く内容が多く、会場は真剣な眼差しに包まれた。
特に「子どもには期待ではなく、応援を」という言葉には、多くの保護者が深く頷いていたのが印象的だった。
クリスタにとって辻󠄀氏との出会いは、競技人生における大きな転機でもある。
東京2020オリンピック代表を逃した経験を経て、クリスタは辻󠄀氏から「内側を整える」ことの重要性を学んだ。その学びは、のちのパリ2024オリンピック金メダルへと確実につながっていく。
「私自身も、東京オリンピックがダメだった時、そこから再起できたのは、柔道力をつけたことだけでなく、内側、メンタルの部分が変わったからだと思っています。」
辻󠄀氏の話をもっと多くの人に届けたいというクリスタの強い想いが、トークセッション実現の背景にあった。
「これからは、子どもだけではなく保護者の皆さんも、子どもの成長を見守る中で、自分自身がご機嫌になるということを取り入れるともっと楽になるし、絶対に良いことだと思うんです。今日は先生に来ていただけて本当に良かったです。」とクリスタは語った。
トークセッション後には、柔道未経験者も参加できる体験イベントを実施。
安全な転び方教室やアクティブチャイルドプログラムでは、会場の空気が一気に明るくなり、笑い声が絶えない時間となった。
この体験パートでは、MCを務めた村山洸介氏(誠心館道場館長)の存在も光った。
「村山さんは進行が本当に上手い。私はほぼ立ってただけ(笑)子どもたちの心のつかみ方って、ああいうやり方なんだろうなと思います。」
クリスタ自身、体験プログラムを通して多くの学びがあったという。
「子どもはこちらが一方的に話しても集中力が続かないので、体を動かしながら教えることが大事なのだとすごく感じました。遊びながら柔道を覚えられたら、それは最高ですよね。私も村山さんのような指導スタイルをもっと勉強していきたいと思いました。」と振り返った。
参加者からは、親子で前向きな気持ちで楽しく参加できた、初めての柔道を楽しく体験できたのでとても良かった、といった声が寄せられ、イベント全体が学びと気づきの時間として深い満足感を生んだ。
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動画ならではの空気感も、ぜひお楽しみください。
|長野から世界へ―未来へ続く“はじめの一歩”
この大会はクリスタにとって、はじめてづくしの挑戦だった。
大会名や大会ロゴ、記念Tシャツやタオルのデザインも、クリスタ自身が企画から参加し、実行委員会メンバーとともに作り上げたという。
その過程では、松本市や塩尻市など自治体との調整も重ねながら、地域に根ざしつつ、世界へと開かれた大会をどのように描くかを模索してきた。
今後も自治体の理解や協力を得ながら、スポーツを通じた地域活性化をさらに推し進めていきたいと考えている。
クリスタは「来年も大会を続けたいという気持ちはありますが、私一人では実現できません。皆さんがやりたいと言ってくれる、その声が次につながる大きな支えになります。」と話す。
大会は一度きりではなく、子どもたちの成長の場として継続し、将来的には県外、海外の子どもたちとの国際交流にも発展させていきたいという構想がある。
そのためには、クリスタの想いだけでなく、地域の方々、パートナー企業、自治体、多くの仲間の協力が欠かせない。
観光・宿泊業、地域企業との連携も視野に、スポーツを軸にした地域活性化へつなげることも期待されている。
「THE FIRST STEP -JUDO Fes 2025 with Christa-」
その名の通り、この大会は長野の子どもたちにとって、そしてクリスタ自身にとっても、新たな挑戦の始まりとなった。
子どもたちの笑顔、仲間を励ます声、小さな勇気、初めて触れた柔道の楽しさ。
クリスタが受け取ってきた“応援のバトン”を次の世代へ渡すこと。
そのすべてが、未来へつながる力になっていく。
長野から世界へ。
始まったばかりのこの小さな一歩が、やがて大きな飛躍へと実る日を楽しみに待ちたい。
(写真 :日髙慎一郎)
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