2026年1月30日

UCバークレーで始まった新しい挑戦~三井愛梨が語る、戸惑いと手応え~

三井 愛梨

2025年9月アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校に進学した三井愛梨(旭タンカー所属)。

名門大学での勉学と競技生活を両立する彼女の毎日は、想像以上に慌ただしく、そして刺激に満ちている。

渡米直後から始まった新生活のリアルを聞いた。

「何もわからないまま始まっていた」慣れる前に走り出したアメリカでの日々

三井の新生活は、アメリカに到着したその瞬間から慌ただしいスタートを切った。
ビザの発給が遅れた影響で、オリエンテーションの期間を逃した状態での渡米となったため、現地に到着したその日は荷ほどきを終えたら就寝し、翌朝からさっそくオンライン授業に出席する形となった。

「最初に出たその授業はすでに2回目の内容に入っていて、何がなんだかわからない状態で。慣れる間もなく、全部が同時に動き出した感じでした。」


本来であれば、オリエンテーションで少しずつ環境に慣れながら授業へ入っていくはずだったが、その準備期間を飛ばしてしまったため、いきなり本番に放り込まれるようなスタートとなった。


三井が履修しているのは心理学、統計学、スチューデントアスリート向けの総合的な思考クラス、そして国際学生向けのカレッジライティングの4科目。
授業体系は日本の大学とは大きく異なり、日本では「1限」「2限」と時間枠が決まっているが、アメリカでは授業ごとに時間や形式が変わり、1時間で終わるものもあれば、2時間かかるものもあるという。

「講義のほかにも、少人数のディスカッションや実践型のラボがあって、知識のインプットとアウトプットが明確に分かれています。」

この日本と全く違う授業体系が三井にとって面白いところだと話す。

一方、苦労しているのは課題の量で、心理学の授業では毎週膨大なリーディングが課されるという。

「こんなに読めないよって思うほどの量が出るんです(笑)」


アスリート向けのクラスでも50ページ近いリーディングが出されることもある。
いずれも容赦のない量で、周囲の学生たちも「リーディングが多いよね」と話しているそうだが、読んで、考えて、書いて、発言するというすべてが連動した環境がUCバークレーには整っている。


学習する場所も多様だ。
当初、三井は寮の部屋で勉強していたが、集中が途切れがちだと感じ、図書館やキャンパス内のカフェ、ラーニングセンターなどへ足を運ぶようになった。
キャンパスを歩くと、どこを見ても学生たちが勉強している光景が目に入る。

「外の広場とかベンチとか、本当にみんないろんな所で勉強しています。階段の手すりの上にパソコンを置いて立ちながら勉強している人もいて、こんな場所でも勉強するんだ!って思いました。」

周囲の勉強への意欲に驚きつつも、その環境に触れることで、三井のモチベーションも自然と高まっているという。

英語への大苦戦と小さな成長、「自分から話しかける」を毎日のルールに


そして何よりも大きな壁が、英語だ。

授業だけでなく、日常生活のすべてが英語で進む環境の中、最初の1~2週間はみんなが何を言っているのか全然わからず、まさに“大苦戦”の日々だったという。
しかし、最近は少しずつ耳が慣れ、だんだんと話の内容をつかめるようになってきたそうだ。
三井は、そんな日常の中でひとつのルールを決めていると話す。

「1日に1回は、自分から話しかけると決めています。会話になっているかはわからないんですけど(笑)」

英語が拙くても、伝わらなくても、自分からコミュニケーションを取ることを恐れない。その挑戦の積み重ねは確実に力になっているはずだ。

キャンパスでは主に、同じくスチューデントアスリートとして留学している岡留大和選手をはじめ、日本人アスリートの仲間たちと支え合いながら過ごしているという。
そこから新しい友人を紹介してもらうこともあり、英語力がまだ十分でなくても交流の輪も少しずつ広がりつつあるようだ。

寮生活とアスリートの1日

三井が入っている寮は、水泳部のフレッシュマン(新入生)が全員入ることが決まりになっている寮だ。2人部屋で、ルームメイトはノルウェー出身の平泳ぎ選手。母国では記録保持者でもある実力者だという。

部屋は決して広くはないが、冷蔵庫や電子レンジ、湯沸かしポットが備え付けられ、生活には十分な環境が整っている。


「トイレとシャワーはフロア共用で、他の部屋の学生たちと共同で使っています。日本と比べたらそんなにきれいではないですが、他の寮よりは全然きれいで快適な方です。バスタブがないのでお風呂に入れないのは残念ですが、生活そのものには大きな不便はないですね。」

食事は寮の外にダイニングホール(食堂)が2か所あり、寮生やミールプラン契約者が利用できる仕組みになっている。

「私のミールプランは週14回分なので、1日あたり2食の計算で利用しています。」

スイミングチームは早朝から練習があり、ダイニングホールが開く前に朝食をとることはできないため、朝は寮の自室で食事を済ませ、練習後に改めてダイニングホールで食事を取り、そのあと授業に向かうという流れが定着している。
練習と授業の合間に食事を取ることで、1日の食事サイクルを整えている形だ。


そして、練習と授業に追われる1日は、まさに分刻みのスケジュールで、特に水曜日が一番忙しいという。


  • ・朝5時半に起床し、6時から8時過ぎまで朝練。
  • ・練習後はそのままダイニングホールへ行き、11時からの授業に備える。
  • ・授業後は13時30分からドライランドトレーニング
  • ・16時までスイム練習
  • ・17時からラボ
  • ・19時からチュータリング(個別指導)


キャンパスは広く、坂道が多いため、基本的にどの施設に行くにも徒歩で15分ほどかかる。
チュータリング後、食事を済ませて寮に戻る頃には21時を過ぎるというハードスケジュールだ。

「朝も早いし、週の真ん中の水曜は本当にクタクタです」


日々、授業と練習に追われるアスリートの学生たちにとって休日は貴重な時間だ。
一般の学生が金曜の夜を「ハッピーフライデー」と呼びリラックスする中、三井たちは土曜日まで練習をこなし、日曜日にようやく休日を迎える。


しかし、渡米後の最初の1か月間は例外だった。
9月は「リクルートウィーク」と呼ばれる期間があり、日本でいうオープンキャンパスのような翌年度以降の新入生候補の受け入れ行事があったためだ。
キャンパスツアーをしたり、一緒に食事を取ったり、寮の自室での宿泊を受け入れたり、チーム活動としてのスケジュールが3週間ずっと詰まっていたという。

「週末もチーム活動で埋まっていて、自分の時間がほとんどなくて、みんなも本当に疲れていました。9月にアメリカに来て、その最終週でようやく初めて自由な週末を過ごすことができた感じです」

不安と向き合い、支えを得て前へ

忙しくも充実した毎日を送りながらも、異国の地での生活は簡単ではない。
三井はアメリカに到着した翌日から早くもホームシックに襲われたと話す。

「最初の頃はもうどうしよう、どうしようと(笑)授業にもついていけないし、大変なことばかりで本当に不安でした。お母さんと頻繁にLINEで連絡を取って、いろいろ相談していましたね。」


そんな時、母親が調べてくれた情報や、コーチからの助言が支えになった。
インターナショナルオフィスやラーニングセンターといった学内の支援機関を活用することで、少しずつ環境に馴染み、生活のペースを掴んでいったという。

「今は最初の頃よりも様々な助けを借りながら、いろいろなリソースをうまく使えるようになってきたと思います。」

体感した文化の違い


UCバークレーの水泳チームに入って最初に感じたのは、日本との文化の違いだった。
日本ではプールに入る前の準備体操を丁寧に時間をかけて行うが、アメリカではそれほど厳密ではない。

「15分ほど軽く動いて、もう飛び込むの?という感じでした」

この違いは、これまで日本の環境で育ってきた三井にとって、自分で工夫をして調整する必要があると感じている部分だという。


さらに、練習メニューの伝え方も日本とは大きく異なる。
日本では事前に練習メニューが配られたり、ボードに書かれたりと、説明を受けてから始まるのが一般的だが、UCバークレーではその場で口頭で指示されることがほとんどである。
電光掲示板に一部だけ表示されることもあるが、基本的にはその場で「これとこれをやるよ」と伝えられるため、英語を聞き取って理解し、すぐに練習を開始しなければならない。

「いつ終わるかもわからないし、どんなメニューが来るかもわからない。そういう状態で練習をこなすことは、精神的にも肉体的にも大きな挑戦だなと思っています。」


チームの練習は、種目や距離によってグループ分けされている。
プールは2面あり、朝練と夜練でグループが分かれることが多いが、三井は幸いにも、朝練・夜練とも同じプールで練習できる環境にあるという。
男女別や種目別に分けられる日もあり、練習の進め方や組み合わせは多様だ。


「日本では長時間同じメニューを繰り返す練習が多くて、精神的に結構きつかった。バークレーでは複数のメニューを組み合わせて繰り返す練習なので、私にとっては飽きずに集中力を保ちやすいと感じています。とはいえ、体の切り替えとか慣れるまでは難しい部分もあります。」

強くなるための環境と挑戦

チームにはアメリカのナショナルチームの選手も複数在籍しており、スピードや体格の差に驚かされた。


「とにかくみんなめちゃくちゃ速いです!」


たまたま三井の隣のコースで泳いでいたナショナルチームの女子選手は、スタート後あっという間に姿が見えなくなるほどの速さを持っていたという。


また、チームメイトたちは体格が非常に大きく、パワーの違いにも驚かされた。
ウェイトトレーニングの重さも個々で異なるが、三井の倍近くの重量を扱う選手も珍しくなく、肉体面でも刺激を受ける環境だ。


「みんな本当にパワーがやばいですね。パワー!って感じです(笑)」


日々の練習は“きつい、無理だ”と考える暇もなくどんどん進んでいく。
周りの勢いに押されながらも、今はそれについていくことが精一杯。だが、その中でも強くなれる確かな手応えを感じているという。


「環境に慣れてペースをつかめるようになったら、自分なりの工夫を加えたりして、もっと速くなれると思うし、強くなりたいです。」


三井愛梨は様々な違いを肌で感じながら、異国の地で勉強し、泳ぎ、新たなステージに向けて日々努力を重ねながら挑み続けている。