2025年10月5日

「卓球×麻雀」金メダリストが語る“読み合い”の奥深さ──水谷隼が魅せられた静かなる勝負の世界

水谷 隼

|麻雀との出会いとアンバサダー就任


Q: 最初に、世界麻雀アンバサダーの打診が来た時の気持ちを教えてください。
最初はとても驚きました。それと同時に、喜びも相当大きかったです。

もともと麻雀が趣味で、卓球の次くらいにたくさんやってきているので(笑)

好きな麻雀で何か仕事ができたらいいなという気持ちもあったので、今回アンバサダーのお話をいただいた時は本当に嬉しかったですね。


Q: 麻雀を最初に知ったのはいつ頃ですか?
小学校低学年の頃だったと思います。

祖父の家に2人麻雀用のゲーム機があって、それで遊んだのがきっかけでした。


Q: 麻雀の魅力にはまったのはいつ頃ですか?
本格的にはまったのは大学生の頃です。

漫画でカイジを読んだのがきっかけで、そこからどんどん麻雀にはまっていきました。


Q: 麻雀のルールは複雑なイメージがありますが、最初から理解できましたか?
小学生の頃に遊んでいた時は、よく分からないままやっていましたね。

カイジを読み始めて、ちゃんと楽しみたいなと思って、しっかりルールを理解したのは大学生…20歳くらいの時じゃないかな。


Q: 現役中は海外に行くことが多かったと思いますが、海外にも麻雀仲間はいましたか?

いや、現地に麻雀仲間はいませんでしたね。

海外にいる時はいつもオンライン対戦をやっていました。


Q: 今はどのように麻雀を楽しんでいますか?

今もほとんどオンライン対戦です。

Mリーグも毎年見ていて、観戦も好きですが、もっぱらネットゲームで楽しんでいます。

|駆け引きや流れ、その感覚と重要性


Q: ご自身が思う麻雀の魅力を教えてください。

やはり、奥深さですかね。攻めるだけではダメだし、守るだけでもダメ。

攻守のバランスが大事という点では卓球と似ているところがあると思います。

そのバランスを保ちながら勝負どころで攻めるメンタルの強さだったり、その辺りの駆け引きが面白さ、魅力だと思います。

あとは卓球をしている時も、麻雀をしている時も、「流れ」や「目に見えない力」をすごく感じるので、それが勝負を大きく左右するという点も面白いなと思います。


Q: その「流れ」や「目に見えない力」はどうやって感じるのですか?

自分の場合は匂いですね。嗅覚です。

何言ってんだと思われるかもしれませんが(笑)

その時の運の良し悪しも含めて、目に見えないものをいかに感じ取れるかが勝ちに繋がるヒントになると思うし、強い選手ほどそういう流れをしっかり捉えているなと感じます。


Q: 人が流れに乗っているかどうかはわかりますか?

そうですね。テレビとかで麻雀を見ている時は、その人が流れに乗っているのか、あるいはあえて逆らって意識的に流れを変えようとしているのかなど、ある程度はわかります。


Q: 卓球でも流れを意識的に変える選手はいますか?

強い選手はみんなそういう力を持っていると思います。

ただ、流れを作ることはそんな簡単なことではないし、やっぱり自然と生まれるものではあるので、そのいい流れ、悪い流れというのを敏感に感じ取れる人が結果的に強いんだと思います。


Q: 流れを感じるためにはどうしたらいいと思いますか?

うーん、そうですね。

そういう力って本当に一定のトップレベルになった時というか…感覚や神経が研ぎ澄まされて初めて得られる力だと思うんですよね。

正直なところ、普通に生活をしているだけではなかなか難しいんじゃないかなと。

自分の場合はずっと卓球をやってきて、いろいろな経験をしてきたからこそ得られた、一種の特殊能力だと思っています(笑)

|これぞ水谷流・卓球×麻雀論


Q: では、卓球や麻雀で相手をコントロールすることはできますか?

卓球の場合は相手の性格を考えて、自分主導の戦い方にしたり相手に合わせた戦い方にしたり、戦術を変えながら試合を展開していくというのはありますね。

あとは、相手を揺さぶるために、あえて激しい感情を出したり、苦しい感じを出したり。

麻雀の場合はなかなか難しいですが、リーチや鳴き(※ポン、チー、カン)でプレッシャーをかけるとか、そういう作戦を取ったりはします。


Q: 麻雀でもあえて感情を出して、相手に影響を与えることはできますか?

麻雀では、相手に影響を与えるような感情を出すことはマナー違反なんです。

三味線(※相手を惑わせるような行為)や無意味な長考などもマナー違反ですね。

麻雀は紳士的な行動が基本とされているので、感情を出すのはタブーですが、その中でどう駆け引きするかは重要だと思います。


Q: 麻雀における“自分にしかできない戦い方”はありますか?

自分はどちらかというと理論派なので、基本は確率を重視してやっています。

ただそれだけだと勝てないので、自分の感性や流れはとても大事にします。

基本の確率は大事にしつつ、勝負どころでは確率を裏切ってでも自分の感性を信じて思い切る。そんな感じですかね。


Q: 卓球での下剋上は難しいと聞きますが、麻雀ではどうでしょうか?

すごく多いと思います。

長期戦では実力者が有利ですが、短期戦では素人が勝つことも十分にあります。

運も大きく左右するので、実力があっても必ず勝てるわけではない。

そこが麻雀の面白さでもあるなと思います。


Q: ご自身は運を引き寄せるために何かしていることはありますか?

自分は特別何かしているということはないですね。

周りの人の中にはお参りに行ったり、ゲン担ぎの食事をしたりというのは聞いたことがあります。


Q: 卓球ではルーティンを作らないと聞きましたが、麻雀でも同じですか?

同じです。

ルーティンにこだわると、それが崩れた時に不安になってしまうのが嫌なので、あえて作らないようにしています。守っても必ず勝てるわけじゃないですしね。

ルーティンにとらわれず、その日の自分の状態に合わせて戦えることの方が大事かなと思います。


Q: ご自身が思う強い打ち手とはどんな人だと思いますか?

思い切りの良さがある人が強いと思います。

麻雀は4人で戦うので、単純計算で攻められるのは4回に1回じゃないですか。その限られたチャンスで、いかにリスクとリターンを見極められるか。

攻守のメリハリをつけて、弱気にならず、自分を信じて勝負に出られる人が強い人だと思います。


Q: 強い打ち手の勝負強さを一言で表すと?

「経験の豊富さ」ですかね。

どれだけ多くの修羅場をくぐり抜けて、どれだけの経験を積んできたか。

いろんな修羅場を乗り越えてきた人は、その人なりの戦い方があるので、自分もそういう人と戦う時は嫌だなと思いますね。やっぱり一筋縄ではいかないなと。


Q: 麻雀ではどういう選手が気になりますか?

うーん、そうですね。

プロの選手たちは、常にみんなから見られている中で戦っているので、戦い方に批判が集まることもあるんですよね。

なのでそれを避けるために、確率重視が基本になってくるのですが、自分はそういう中でも変化を作れる選手というのが見ていて面白いと思います。


Q:世界麻雀での日本の強さはどう思いますか?

日本は強いと思います。

日本ルールで行われるのでルール面でも有利ですし、参加人数も多いですし。

圧倒的に強いと思いますね。


Q: 麻雀の役で好きな役はありますか?

やっぱり役満はすべての麻雀プレイヤーにとって特別だし、出たらすごく盛り上がります。その中で「国士無双」というのがあるんですが、3種類の数牌の1と9、字牌の東南西北白發中(トンナンシャーペイハクハツチュン)をすべて揃えて、その中のどれか1つを対子(トイツ=同じ牌が2枚ある状態)にすると完成するんです。

それぞれはバラバラなんですが、そのバラバラが集まると一気に強くなると。

しかもこの役は役満の中でも比較的出やすいので、好きですね。


Q: では最後に、麻雀を見るのと打つのでは、どちらが好きですか?

どちらか選べと言われたら、絶対に打つ方ですね。でも、見るのも大好きです。

見る時は断然ライブですね。麻雀は生だからこそ面白いんです。